雪の降る季節に生まれ、そして雪の降る季節に還ったゆきちゃんへ──三十年目の約束と、白い花に込めた想い
実家からの帰り道、道路脇を歩くゆきちゃんの姿に気づきました。
思わず車の窓を開けて、「ゆきちゃ〜ん!」と大きな声で呼びかけると、ゆきちゃんはいつもの優しい笑顔で、大きく手を振ってくれました。
あの光景が、私が見た最後のゆきちゃんの姿になりました。
それから二日後、ゆきちゃんは自ら命を絶ってしまいました。
今年の十二月で、ゆきちゃんが旅立って三十年になります。
雪の降る季節に生まれ、雪の降る季節に還っていったゆきちゃん。
名前のとおり、しんしんと積もる雪の日の様な静かで
真っ白な雪の様な心の
どこか儚いひとでした。
もう姿のあるゆきちゃんには会えない。
けれど、私は毎年、真っ白な花を抱えて年に三回
ゆきちゃんに会いたくて
お墓へ向かいます。
白は、ゆきちゃんの色。
汚れのない、やわらかな心の色。
お墓の前では、悩み事も、嬉しかった出来事も、そして二人だけの思い出も、たくさん語りかけます。
返事はなくても、心の奥でそっと受け止めてもらえている気がするのです。
昨年の暮れにゆきちゃんお墓に会いに行ったとき、ふと胸の奥にゆきちゃんの声が聞こえてきました。
「母ちゃんのところへ行ってほしい」
いつも私のわがままを全て受け止めてくれたゆきちゃん。
お喋り好きな私の話をずっと聞いてくれたゆきちゃん。
ゆきちゃんから私に頼み事なんて一度も無いまま会えなくなってしまったのに。
ゆきちゃんから私への
初めてのお願い事。
ゆきちゃんのお母さんは、私の母とも仲が良く、ゆきちゃんと一緒で、物静かでとても優しい方。
「会いに行くよ!」と言ったものの
引っ越しをされていて、どこにお住まいなのか分からないままでした。
それでも不思議と足が向きました。
日も暮れ、近所で畑仕事をしていた顔馴染みのおじさんが、ちょうど農作業を終えたところに出くわし
ゆきちゃんの家族の引っ越し先を尋ねると
「案内するよ」と言ってくださり、私は急いで御仏壇にお供えする白い花を用意しました。
三十年という時間は長いはずなのに、想いは少しも消えていません。
むしろ年月を重ねるほどに、静かに、深く、心の中に根づいているように感じます。
そして、この出来事には、まだ続きがあります。
あの日、白い花を抱えて訪ねた先で感じたこと、再び結ばれたご縁、胸に広がった静かな想い。
それはまたあらためて、丁寧に書き残したいと思っています。
三十年目の冬にあらためて気づいたこと。
大切な人とのつながりは、形を変えても終わらないということを。

